凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
深々と頭を下げるルーリアの姿に、エリンがバスカイルの血筋でも謙虚な者もいると早急に考えを改めてくれるようカルロスは願った。
「礼など必要ない。まして先日のことは任務を遂行しただけだ」
淡々と答えてすぐに部屋を出て行こうとするカルロスを、「あのっ、もうひとつだけ」とルーリアは呼び止める。
「カルロス様は、父から私のことをどこまで聞いていらっしゃるのですか?」
ルーリアは緊張の面持ちで、足を止めて振り返ったカルロスからの返答を待った。しかし、カルロスはルーリアの言う「どこまで」という言葉の意味を測りかねるように眉間に皺をよせて腕を組む。
ルーリアは表情を強張らせ、震え出した手をぎゅっと握りしめると、勇気を振り絞ってもう一歩踏み込む。
「もし聞いていないようなら、ご迷惑をおかけする前にカルロス様に早めに話しておかなければと思いまして。じ、実は私、出生時に……」
誰かに自分のことを打ち明けるのは初めてのことで、緊張感に支配される。
ここまで頑なにルーリアの存在をバスカイル家が隠してきた理由は、不吉とされる黒精霊からの祝福は不名誉であり、恥でもあるためだ。
もし何も知らなかったら、カルロスもルーリアを嫁にもらってしまったことを「恥」だと思うかもしれないのだ。ルーリアは恐くて堪らなくなり、最後まで言い切れず俯いてしまう。