凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
「カルロス様。これってもしかして」
「ああ。ランタンを持って歩くのは何かと不便だろう? とりあえずこれで屋敷の中は自由に動き回れるはずだ。でも外は足りないから、まだ庭には出ないように」
(……すべて、私のためにしてくださったの?)
ルーリアは口元を両手で抑え、わずかに肩を震わせ、目に涙を溜めた。
今にでも泣いてしまいそうな様子に、カルロスが「ちょっと待て」と慌てて声をかけたところに、エプロン姿のエリンが姿を現す。
「そちらがカルロス坊ちゃんの花嫁様ですね?」
先制攻撃を仕掛けるかのように棘のある口調でエリンが声をかけると同時に、ルーリアがエリンへ振り返った。瞬きと共にルーリアの目から涙がこぼれ落ち、「すみません」とすぐさまルーリアが顔を伏せる。
一瞬で毒気を抜かれてしまったエリンは、必死に涙を堪えているルーリアと同じく状況を飲み込めていない様子のカルロスを交互に見た。
「カルロス坊ちゃんが、意地悪なことを言ったのですね?」
「言ってない、はずだか……今は」
珍しくはっきり言い切らないカルロスにエリンが疑うような眼差しを向けると、ルーリアがふるふると大きく首を横に振った。
「私、カルロス様に意地悪なことなんてひと言も言われていません。逆です。お心遣いが嬉しくて。ありがとうございます」
カルロスに対して頭を下げながら、涙を堪えきれないでいるルーリアの姿に、エリンは「あらまあ」と呟き、ポケットからハンカチを取り出してルーリアに差し出した。
ルーリアはそれに戸惑いながらも、恐縮した様子で受け取ると、そっと目元に押し当てる。エリンは頭に浮かんできた素朴な疑問をそのまま口にした。