心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「離して! あの子はいたらダメなのよ! 悪魔の子なんだから!」

「落ち着け!!」


 ナイフを奪おうとするが、イザベラが激しく暴れているためうまく取り上げることができない。
 少し離れた場所から、キーズを押さえつけているガイルが「グレイ様!」と叫んだ。

 ナイフの奪い合いの末、イザベラが奇声を上げて腕を振り回した時……ナイフの刃がスパッと顔を切りつけた。

 右耳下のあたりから斜めに、左眉まで。
 長い切り傷からは少しだけ血飛沫が飛んだ。
 

「きゃあああっ」


 顔面の激痛から、イザベラが悲鳴を上げた。
 イザベラの振り上げたナイフは、無残にも自身の美しい顔を傷つけていた。
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