心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 マリアはそう言うなり、団長に手を引かれて馬車へ乗り込んだ。
 周りは騎馬隊が囲んでいる。かなりの厳重な警護であるが、そのおかげでグレイは安心してマリアを送り出すことができた。

 馬車が見えなくなり、家の周りを警備していた騎士達もいなくなった後、レオがため息まじりにグレイの肩を掴んできた。


「グレイさぁ〜、なんなのあの言い方は……」

「あ? なんの話だ?」

「さっきのマリアへの言葉だよ! あんな無愛想な顔で淡々と言ったら、ムードもトキメキもないじゃないか」

「そんなもの必要ないだろ。マリアは喜んでいたし、何がいけないんだ?」

「いや。いけなくはない……いけなくはないんだけどさぁ〜、もっとこう……! 甘さが足りないよ!」


 グレイは極力表情から『バカ』と思ってるのが伝わるように、心底軽蔑したような顔をした。
 レオが「なんだよ、その顔は〜!」とプンプン怒っている。



 甘さってなんだ……!?
 コイツは一体何を考えて何を求めているんだ!?


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