心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 聖女の研究者として、ジュード卿はその力について様々な実験を行った。


 末期の病気でも治すことができるのか。
 傷の具合によって治す時間は変わるのか。
 月の大きさによって、聖女の力に変化はあるのか。


 実験体としたのは、とても真っ当な貴族とは言えない連中ばかりである。

 裏で悪業を行っては金を稼いでいるような貴族。
 もしも聖女の事を口外することがあれば、その悪事を公にするという脅し付きで治療をしている。

 もし聖女が王宮に匿われたなら、そう簡単に治療は受けさせてもらえないかもしれない。

 しかし、ジュード卿の下にいるのであれば、金さえ払えばいつでも治療を受けられる。
 ジュード卿を裏切っては、自分の悪業も暴露され自分の身も危ない。

 そんな理由から、誰も聖女のことを王宮に報告する者などいなかった。
 元々、聖女に同情したり聖女を崇めるような心の持ち主など、その貴族の中にはいないのである。
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