運命の人
 「何者なんだろうな、そいつ」

 佐々木くんが定食の味噌汁を飲みながら聞いてきたのでスマホケースに入れておいた名刺を取り出し、佐々木くんに見せる。

 「小田商事って本物のエリートじゃん。しかも本部長?年配者だったのか?」

 「32って言ってたよ」

 「32で本部長?!詐欺かなにかじゃねーの?!」

 「なんの詐欺よ」

 思わず笑ってしまったけど、言われてみればその可能性はあるかもしれないと急に真面目な顔になる。

 「もし詐欺だとしたらタクシー代で借りを作っているのは良くないよね?」

 「そうだな。早いとこお礼渡して縁を切った方がいいんじゃないか?」

 「そうだよね」

 危ない。
 勘違いしてとんでもないことになるところだった。
 26で詐欺に遭って、親や兄弟に迷惑かけるようなことになったら立つ瀬ないもの。

 「お礼は無難な消え物。渡すのは直接じゃなくて間接的がいい。会社の受付に渡すのが一番かもな」

 佐々木くんの言葉にしっかり頷く。

 「それもなるべく早い方がいいよね。今日の仕事終わりにでも買いに行って来るよ」

 「俺も一緒に行くよ。買いたいものあるし、話を聞いた手前、放ってはおけないから」

 佐々木くんは立ち上がり、腕時計に目を向けた。

 「7時には仕事終わるか?」

 「終わらせる」

 佐々木くんの好意をありがたく受け取り、お弁当箱を片付けて一緒に部署へ戻った。
< 22 / 60 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop