運命の人
「な、なんですか?」
驚く佐々木くんに、如月さんは手を素早く離し、謝罪した。
「すみません。つい」
「つい、って……」
佐々木くんは険しい表情で如月さんを見ている。
対する如月さんは動揺しているのか顔を背けた。
「ちょっと、あなたね…」
佐々木くんが喧嘩腰に如月さんの方に踏み出した。
多くの人が行き交う駅で大の大人がケンカになんてなったら大変だ。
「あ、あのっ!如月さんはここでなにを?」
二人の間に無理やり割って入った。
「澪〜…」
佐々木くんは不満そうに私を見下ろすけど、手で制して如月さんの答えを待つと自宅に戻るところだったと教えてくれた。
「この上に住んでいるので」
如月さんが指さした方にあるのは普通に天井。
だけど駅と直結しているマンションの存在を思い出し、納得する。
大手企業の重役ともなれば高級マンションに暮らしていても不思議ではない。
「そうだ。もし良ければうちに来ませんか?」
「えっ?!」
「えっ?!」
佐々木くんと声が重なってしまった。
「仲がいいんですね。お二人はどういったご関係ですか?」
「それ、あなたに関係ありますか?」
私が口にする前に佐々木くんが低い声で聞いた。
如月さんは少しだけ困ったように笑って。
「もしかして牽制されてます?」
「出方によっては」
佐々木くんは挑むように上からものを言う。
「ちょっと、二人とも」
もう少し穏やかに話をしてほしい。
それを言おうか迷っていると、如月さんが和菓子の紙袋を見えるように持ち上げた。