運命の人
「この和菓子、美味しいんですよ。だから一緒にいかがかな、と思ったのですが」
「そういうことでしたか」
だとしてもこんなピリついた空気感になるメンツで和菓子をいただくというのはさすがに無理がある。
「すみません。私たち、これから用がありますので」
本当のことだったし、妥当な断りの文句として口にした。
それなのに如月さんはほんの一瞬、本当にほんの一瞬だけど傷付いたような顔で私と佐々木くんを交互に見た。
「あの…本当にすみません、せっかくお誘いいただいたのに」
傷付けたつもりはもちろんなかったけど、さっきの表情が脳裏に焼きついてしまった。
すごく申し訳ないことをした気がして焦る。
「いえ。こちらこそ状況を弁えず、すみませんでした。でもこのお礼は必ずさせてください。あなたに会うためなら手段は選ばないので」
「そういうこと言ってあなたね…」
佐々木くんはそう言うと、一歩前に進み出ようとした。
でもそれより早く如月さんが私の腕を掴み、グイッと引き寄せきた。
「な、なんですか?!」
驚いて見上げると、至近距離で如月さんと目が合い、ドキッとする。
「一目惚れしたと言ったのは嘘じゃないんですよ。だからまた連絡しますね」
大人の色香を含む妖艶な瞳に捉えられて、ドクンとひと際大きく跳ねる鼓動に困惑していると如月さんは腕を解き、小さく会釈してから去って行った。