運命の人
 「あいつ、ヤバいな」

 中華レストランに入ってからの佐々木くんの第一声。

 「ヤバい、のかな?」

 「ヤバいだろ。『うちに来ませんか?』とか、初対面の俺の手を掴むとか『手段は選ばない』とか。普通じゃねーよ」

 「そう、だよね」

 メニューを開いてはいるけど、文字も写真も頭に入ってこない。
 頭の中は如月さんのことでいっぱいだ。

 「澪、最後に何て言われたんだよ」

 「『連絡する』って」

 それだけ言うと佐々木くんの表情は険しくなった。

 「なんで連絡先交換しちゃってんのかね」

 「聞かれたから」

 そう答えると今度は呆れたようにため息をつかれてしまった。

 「まぁ、分かるよ。男の俺でも一瞬見惚れるくらいのイケメンだからな。でもそれだからこそ余計に怪しいんだよ」

 「私に魅力がないから…ね」

 如月さんと釣り合うような魅力的な女性であれば詐欺かもしれないなんて悩まないし、佐々木くんが心配することもない。

 「なに言ってんだよ。澪は可愛い。普通に可愛い。いや、かなり可愛いよ」

 「ちょっと、なに?どうしたの、急に」

 私は変わらず笑っていなすも、佐々木くんは真面目な顔で続ける。

 「俺は歳上が好みだから澪のことは恋愛対象には見てないし、お前も俺のこと同期以上に見てないことは承知しているから言うけど、澪は可愛い。俺が今まで出会って来た女性の中でも最上位で可愛い。社内でも澪のこといいな、って思って狙ってる男は一定数いる」

 「ちょっと信じがたい話だけど」

 続きをどうぞ、と手で促すと佐々木くんは水を一口飲んでから続けた。
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