私に婚約破棄しようとしてきた王子が、階段から落ちて意識不明になりました【コミカライズ決定】
 まだ少し距離はあるものの、大階段の中央に人が立っているのが見える。

 長身で黒髪の王子……フェリクスだ。

 彼は私に気づくなり、手すりに寄りかかっていた体をピシッと立て直していた。これから大事な話をされるのだと、いやというほど伝わってくる。



 ああ……このまま彼の言葉を聞かずに逃げてしまいたいわ。



 そう思いながらも、足は確実に彼に近づいていく。
 もう何を言われるのかわかっているけれど、素知らぬ顔で彼に話しかけた。


「こんな場所に呼び出すなんて、どうしたの?」

「……大事な話があるんだ」


 いつもはもっと喧嘩腰のフェリクスが、どこか元気のない様子。気まずそうに目を泳がせながら、小さな声でそう呟いた。



 意外ね。
 少しは私に対する罪悪感もあるみたい。
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