愛のない一夜からはじまる御曹司の切愛
 各テーブルを回り、たくさんの人たちと話をし、披露宴は終わりを迎えていた。

 恭弥さんのお父様の挨拶なども無事終わり、最後、恭弥さんの挨拶になる。
 参列のお礼、これからのことなど、経営者としての話に、私も彼の隣で責任を持ち、少しでも恭弥さんが仕事に専念できるような環境をつくろうと心に決めた。

「最後に」

 そう恭弥さんは言うと、私を見つめた。

「たくさんの辛い思いを妻にはさせました。これからはふたりで手を取り、なんでも話し、そして、困難にも乗り越えていきたい。そう思っています。咲良、愛してるよ」


 最後の最後に伝えられたその言葉に、私は驚きと羞恥と、いろいろな感情が入り混じる。

 しかし、たくさんの人の前で宣言することは、彼の覚悟なのだろう。

「私も同じ気持ちです。よろしくお願いします」

 そう答えると、温かい拍手に包まれた。



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