君に、振り向いてほしいから
ふたりで外に出て、ショッピングモールに向かう。

歩いている間も、ちらちらと視線を感じる。

「ねぇ、あれってモデルのすず?」

「やばっ、リアルも超かわいい」

モデルって凄いな……。

尊敬の眼差しですずなを見ると、彼女は困ったように笑った。

「朝陽、今すずのこと凄いって思ったでしょ」

「うん」

すずなが小さく苦笑した。

そのまま前を向いた彼女は、どこか悲しげな笑みを貼り付けたまま無言で歩き出した。 

人気モデルって大変なんだな。

どこに行っても人に見られる。

そのとき、遠くの方から黄色い声があがった。

何だろう?

「ななちゃ〜ん!」

ななちゃん?ななほちゃんのこと?

どうして、外に?

慌ててそこに駆け寄ると、予想通りサングラスをかけたななほちゃんがいた。

「なな!」

すずながななほちゃんの手を掴んで、ショッピングモールの中に入った。

振り返ると、呆然と立ち尽くしているファンの姿が見えた。

すずなはななほちゃんの手を掴んだままトイレに駆け込んだ。

「すず?どうしたの?」

「なな、何してるの?」

ななほちゃんは俯くと、すずなをちらりと見た。

「だって……。明日はすずの誕生日だから……」

すずなは一瞬嬉しそうに微笑むと、慌てたように厳しい顔をつくった。
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