君に、振り向いてほしいから
すずなが羨ましげにつぶやく。

「う〜ん、良いのか悪いのかわからないけどね」

「確かにね」

その後他愛ないことを話し、すずなたちを家まで送った。

家に帰り、リビングのドアを開ける。

一番に目に入ったのは、食卓のうえに置かれた大量の料理だった。

お父さんがなにやらキッチンでつくっている。

中に入り、食卓の上の料理をまじまじと見つめる。

手巻き寿司に、オムレツに……。

私の好きなものばかりだ。

洗面所から戻ってきたらしいお母さんが私を見つめた。

「おかえり、朝陽ちゃん。今日は豪華だよ」

「どうして……?お母さんとお父さんは、お兄ちゃんとお姉ちゃんのことばっかりなのに」

お母さんの目が大きく見開かれた。

そのまま、そっとこっちに歩いてくる。

「朝陽ちゃん……。そんな思いさせちゃってたんだね、ごめんね。でも、お父さんとお母さんは、朝陽ちゃんのことも大好きだよ」

うそ……。そんな風に思ってくれてたんだ。

私が勝手に落ち込んでるだけだった……?

その日は、お母さんたちと他愛のないことを話しながら料理を食べ、一日を終えた。

次の日、荷物をまとめてリビングに降りた。

「行ってきます、ありがとう」

「朝陽ちゃん、体に気をつけてね」

「時々は連絡するんだぞ」

お母さんとお父さんに微笑み、私はそっと家を出た。

バスに乗り、満珠学園に向かう。

着くとすぐに、お兄ちゃんたちが駆け寄ってきた。

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