100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
しかし今は忙しそうなので、和葉も声をかけない。
ギャレー前の通路にはグランドハンドリングのスタッフがいて、機内食を搬入し終えたところのようだ。
すぐにカートの扉を開けたのは嶺谷で、機内食をひとつずつ引き出して不備がないか確認している。
その横を緊張しながら通ったが、チラッと見られただけでなにも言われない。
化粧室やギャレーなど、和葉がキャビン内を点検している間、他CAたちともすれ違ったけれど、誰からも声をかけられず皆が黙々と仕事をしていた。
(注目度が下がった気がする。五十嵐さんの婚約者だという私の噂には飽きた?)
ホッとして客席を見回すと、座席のディスプレイにリングカーソルが現れてクルクルと回転しているものが一台あった。
電源を入れ直しても同じ状況なので、無線で交換の連絡を入れる。
これもライン整備士の仕事のうちだ。
新しいディスプレイが来る前に故障しているものを取り外そうとする。
作業着の後ろポケットに手を伸ばして――和葉は目を瞬かせた。
(あれ? ドライバーがない)
整備士のカバーオールには工具をしまうポケットがたくさんついている。
他のポケットも探したが見つからず、焦りだした。
(うそっ、どこかで落とした!?)
この航空機に乗りこむ前に身に着けている工具を点検したが、その時には確かにあった。
それ以降、今、使おうとするまで取り出さなかったので置き忘れではない。
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