100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
慌ててキャビン内で自分が通った道を確認したが見つからず、コックピットに駆け戻る。
「どうした?」
副操縦士席で離陸前の計器のチェックをしていた五十嵐に問われ、早口で説明する。
「私のドライバーがないんです。すみません、席の周囲を探させてください」
「ドライバー? お前がここを出ていく時に、後ろポケットに入っていたのは覚えているが」
それならばコックピット内にはないということだ。
念のために足元や狭い隙間までライトで照らして確認したが、やはり見つからなかった。
「キャビンも見たのに。どうしよう……」
冷や汗が背中を流れ、鼓動が嫌な音で鳴り立てる。
たかが工具の一本をなくしたくらいで、というわけにいかないのが航空業界だ。
どこかの配線に触れて故障に繋がる恐れがあるからだ。
見つかるまで離陸はできず、搭乗開始の遅れや機材交換の可能性がよぎった。
「大変申し訳ございません。私の不注意です」
手を震わせて深々と頭を下げると、腕を掴まれて顔を上げさせられた。
怖いほどに真剣な顔が近くにあり、思わず鼓動が跳ねる。
「謝っている暇はない。搭乗開始までまだ二十八分あるから、もう一度キャビンを探すんだ。俺は機長と本部に遅れの可能性を報告する。和葉はキャビンクルーに伝えてくれ。整備とクルー全員で探せばきっと見つかる」
「は、はい」
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