100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
和葉が通った場所もそうでない場所も、隅々まで確認すること五分ほどして、「ありました!」という声が聞こえた。
トイレ内を探していた和葉が大急ぎで出ると、機体の中央あたりの通路に皆が集まるところで、嶺谷がドライバーを右手に掲げていた。
(よ、よかった……)
心底ホッとして足から力が抜ける。
体がふらついて転びそうになると、後ろから伸ばされた誰かの腕に支えられた。
「五十嵐さん」
「大丈夫か?」
「はい。あの、たった今、嶺谷さんが見つけてくださいました」
嘆息して口元を緩めた彼の後ろには、この便の機長がいる。
白髪交じりの短い頭髪の機長の名前を和葉が知らないのは、外部から派遣されたパイロットだからだ。
スカイエアライズはここ数年、機長不足で、派遣パイロットに頼らざるをえないフライトもあるようだ。
「ご迷惑をおかけしました」
深々と頭を下げると、軽く頷いた機長が五十嵐と話しだす。
「予定通りのタイムスケジュールでいけますか?」
「はい」
「では私はコックピットにいます。キャビンのことは五十嵐さんに任せますので」
「承知しました」
搭乗開始時刻に変更がないのなら、今回の件はアクシデントではなくインシデントとして報告することになりそうだ。
機内のすべてに責任を持つのは機長だが、派遣パイロットなので五十嵐が事後処理を担当するのだろう。
改めて申し訳なさがつのる。
< 104 / 243 >

この作品をシェア

pagetop