100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
眉尻を下げた和葉を励ますように、背中に大きな手が添えられた。
「行こう」
集まっている皆の方へ近づくと、得意げな嶺谷にドライバーを返される。
「嶺谷さん、ありがとうございました。皆さんも、ご迷惑をおかけしました。このようなことが二度と起こらないよう気を引き締めます」
「まったくよ。すぐに見つかってよかったけど、離陸が遅れたら困るお客様もいるってこと、忘れないで」
「はい。それで、どこにあったんですか?」
嶺谷が指を差したのは、ストウェッジという乗客の手荷物をしまう上部の棚だ。
(えっ!?)
この便に乗りこんでから和葉はストウェッジを開けていない。
離陸前のライン整備では座席回りやトイレまで見るけれど、不具合の報告がない限りそこまで確認しないのだ。
(どうして……)
和葉は静かに混乱し、他の整備士たちはざわざわしている。
先輩整備士のひとりに「開けたのか?」と問われて首を横に振り、嶺谷に疑惑の目を向けた。
「あの、ストウェッジに置き忘れることはあり得ないんですけど、どうしてですか?」
嶺谷にはかなり前から嫌われている。
最近、素敵な出会いがあったようで和葉のことはどうでもよくなったのかと喜んでいたのに、油断させておいてこんな嫌がらせを企んでいたのだろうか。
疑われていると気づいた嶺谷がたちまち怒り出した。
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