100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
羽田に着くのはおよそ二時間後、二十一時の予定だ。
ここは太平洋上で、コックピットから見える景色は黒。
月はほぼ新月と言っていいほど細く、その分、星は輝いて見えた。
その景色になんの感動もなく、安定したフライトの中で時折、計器をチェックする。
(今日は夜勤のはずだから帰宅しても和葉はいない。すれ違いか)
仕方ないことだが、丸四日顔を見られないと会いたくなる。
その思いは喉の渇きに似ていて、ぬるくなったコーヒーを口に含んだ。
瞬く星に和葉の目の輝きを重ねて眺めると、いくらか景色が心に響く。
(まっすぐな仕事への情熱には恐れ入る。あの航空機愛はもはや才能だ。羨ましい)
和葉の情熱が、いつか自分にもうつってくれたらと願う。
そうすれば国際線の長時間フライトも、疲労や責任感だけでなく楽しめるだろうと期待した。
(和葉の顔が頭から消えないな。欠乏症か?)
気づけば和葉がなにをしているのだろうと考えてしまう。
彼女を求めて隣を見たが、当然のことながらそこにいるのは似ても似つかない中年男性の機長だ。
社内規定で十時間を超えるフライトは三人での乗務となっている。機長がふたりに副操縦士がひとりという組み合わせだ。
今は機長のひとりが仮眠室に行っており、狭いコックピットの中で御子柴とふたりきりだった。
「なんだよ?」
「いえ、首をほぐしただけです」
< 150 / 243 >

この作品をシェア

pagetop