100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
『私たちキャビンクルーは運航に支障を及ぼすような真似をしません。職務に誇りを持っていますので。私たちを信じられないのなら、五十嵐さんがこの便を降りてください』
あの時の彼女からは、チーフパーサーの務めを果たそうという熱意が感じられた。
「堂島さんは、私に対してそういう気がないとわかっていますので」
携帯をジャケットのポケットにしまい、彼女の顔を見ながら答える。
「どうでしょう。狙っているかもしれませんよ?」
冗談めかしてそう言った彼女が、コーヒーをひと口飲んでわずかに渋い顔をした。
「父が最近、いい相手がいないなら紹介するぞとうるさくて。父の考えでは、二十七歳は結婚して当然の年齢のようです」
「へぇ、堂島室長が。コックピットでは寡黙なので、そういうイメージはありませんでした」
パイロットは毎年定期審査があり、不合格なら乗務停止となる。
羽田に戻って間もなくしてそれを受け、実務の審査官が堂島室長だった。
審査官が誰であろうと五十嵐は気にしないが、同期の副操縦士が言うには、厳しいジャッジをする堂島室長だけは避けたいそうだ。
「家では冗談を言ったりするんですよ。寒い親父ギャグも。職場でムスッとしているのは、かっこつけているせいだと思います」
娘に暴露されているのと知ったら、堂島室長はどう思うだろうか。
強面が崩れるのを想像してクスリとすると、美玲が嬉しそうに微笑んだ。
< 158 / 243 >

この作品をシェア

pagetop