100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
「堂島室長と乗務する日が楽しみになりました。聞かせてくれてありがとうございます」
「どういたしまして。それと敬語をやめてもらえませんか? 年上で先に入社している五十嵐さんに畏まった話し方をされたくありません」
「堂島室長の娘さんだから、という理由ではありませんが」
「それでも。お願いします」
和葉は例外として、親しい同期のパイロット以外の社員とは基本的に敬語で話す。
それが自分のスタンスだが、美玲の気持ちもわかる。
こちらがいくら違うと言っても、特別視されている気がして嫌なのだろう。
実力で掴んだ最年少チーフパーサーの地位が、親のおかげと思われてしまうのに同情した。
そう考えて「わかった」と言葉を崩すと、彼女が笑顔を見せた。
「ありがとうございます」
「いや、俺の方こそお礼を言わなければ。この前のフライトは助かった。さすが堂島さんだ」
先週、美玲と一緒に乗務をした時に高齢の男性客が上空で『降ろせ』と暴れ出した。
どうしても飛行機に乗らなければいけない事情があったそうだが、高所が苦手らしい。
彼女はすぐに揺れが少ない主翼付近に座席変更し、コックピットにその旨を連絡してくれた。
『私がそばについていますが、なるべく揺れの少ない進路をお願いします』
その乗客がなんとか落ち着いてくれたのは、着陸するまで美玲が手を握り、話しかけ続けて上空にいるという意識を逸らしたからだ。
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