100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
彼女のおかげで羽田に引き返す事態が避けられ、クルーも他の乗客も助かった。
美玲が首を横に振る。
「それが私の仕事ですから。時には大変なお客様もいらっしゃいますけど、無事に目的地にお送りできたら私が嬉しいんです」
仕事への愛を感じ、さらに好感を持った。
(和葉と同じだ。羨ましいな)
「堂島さんがクルーを目指したのはいつ?」
和葉のように子供の頃からの夢なのだろうと予想して問いかけると、バツが悪そうな顔をされた。
「私、音大出身なんです。ピアニストになる夢を追いかけていたんですけど――」
音楽大学には才能あふれる人がたくさんいた。コンクールに出場するたびに天才たちに惨敗し、少し上手なだけの自分ではいくら努力してもピアニストになれないと悟ったそうだ。
「いらない質問をしてしまったな。すまない」
「いえ、いいんです。音楽関係の仕事に就けない卒業生の方が多いので珍しいことではありません。それで夢破れて就職先を探していた時に父からCAを勧められました。一緒に空を飛ばないかと言われて、それもいいと思ったんです」
自嘲気味に笑った彼女は、コーヒーの水面に落としていた視線を五十嵐に向けた。
「CAになりたかったわけではないのに、飛んでいるんです。残念に思いました?」
「いや、少しも」
ただの職場の仲間である五十嵐に正直に話せる強さに感心した。
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