100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
「いやらしい期待を裏切ってすまないが、見せたいものがあるだけだ」
「えっ」
勘違いでさらに恥ずかしい思いをしたが、それ以上からかわれることはなかった。
腰を落とした彼が、デスク横の床に置かれているフライトバックを開けている。
取り出したのは、ふたつ折りの茶色い革のケースだ。
カードか名刺入れにしてはややサイズが大きく、パイロットライセンスが入っているのだろうと予想する。
しかし収められていたのは一枚の写真だった。
デスク上のノートパソコンを端に避けた彼が、空いたスペースにそれを写真立てのように飾る。
真顔で振り向いた彼を見て、大切な話があるのだろうと予感した。
隣に並んで写真を見ると、パイロット風の制服姿の若い男性が、笑顔でコックピットに座っている。
〝パイロット風〟と言ったのは、空港で働いている和葉でも見たことのない制服だったからだ。
年齢は二十代前半くらいで、顔立ちが五十嵐に似ている。
しかし目尻が少し垂れているので、本人の過去の写真ではないようだ。
「兄弟ですか?」
推測で問いかけると、彼が頷いた。
「兄の翔(しょう)」
ふたり兄弟で年は七つ離れている。家族は母と三人で、離婚家庭のため物心ついた時には父はなく、今も連絡を取っていないそうだ。
「この制服は航空大学校のものだ」
< 202 / 243 >

この作品をシェア

pagetop