100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
「体調が悪いのでしたら言ってください」
御子柴の視線がこちらに向いて、クッと笑われる。
「年寄り扱いか?」
「そうではなく、珍しく口数が少ないので」
「話しかける必要性がないからだよ」
御子柴に言わせると、いつもの面倒な絡みは慧のためなのだそう。
すかした態度で辛気臭い表情をしているから、気を楽にさせてあげようという思い遣りらしい。
過剰に緊張していては実力を発揮できない。そういう意味の配慮でペアを組んだ副操縦士全員に同じように接しているのだと思っていたが、「過剰に話しかけてやっていたのはお前だけだぞ」と言われて驚いた。
「今日のお前はいい顔しているからな。俺が構ってやらなくてもいいと思ったんだ。奥さんのおかげか?」
そこはやはり御子柴だ。一度話し始めるといつもの調子でからかってきて、和葉を想いながら飛んでいたのかと笑われた。
これまでは適当にはぐらかしていたが、今は嫌な気がしないので正直に認める。
「そうですね」
「いやに素直だな。雪が降るぞ」
「降りません。この前、実家に和葉を連れていったんです。その帰りに話したことを振り返っていました」
母の口から転職という言葉が出た時、頭が真っ白になった。
自分を思いやっての言葉だとわかっていても、今までの努力が無駄になった気がして心に穴が開いた。
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