100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
「そういう意味じゃない。ほら、四年前のキャビンクルーのあれだよ。また女心をもてあそんで、乱気流に巻き込むなよ」
CAふたりが五十嵐を巡ってオフィス内で掴み合いをした過去の件を持ち出し、からかっているようだが、もてあそぶとは心外だ。
仕事上の相談があると言われふたりきりで食事にいったのは反省点だが、あくまでも職場の仲間として親身に話を聞いてあげただけだった。
ふたりのうちのどちらにも特別な感情はなかったというのに自分の知らないところで取り合われ、ひとりが自主退職という結果になった。
その件があって以降は、たとえ集団での飲み会であっても女性職員からの誘いは断っている。
(そういえば、あの子も職場の仲間か)
思い出しているのは和葉の顔だ。
社内の女性とプライベートで会わないという誓いを破り、一緒に飲んでしまったことに今気づいた。
四年ぶりに帰国したばかりのあの日、中華料理が食べたくなって横浜で食事をし、近くに静かで雰囲気のいいバーがあったのを思い出してあの店に行った。
ところが賑やかな声が廊下まで漏れていて、ビルの階数を間違えたと思った時に和葉に声をかけられた。
『入らないんですか?』
彼女の方は少しも見覚えがない様子だったが、五十嵐は同じ会社の航空整備士だと知っていた。
しかし新人だった四年前の姿しか見たことがなかったので、マスターが彼女の名を呼ぶまでは和葉だと気づかなかった。
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