100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
御子柴の冗談を真に受けたわけではないが、それもいいと考えた。
羽田に戻ってからというもの、これといった用もないのに女性職員が声をかけてくる。
同じ職場なので冷たくするわけにいかず、しかし脈アリだと思われては困るので対応に困る。
その煩わしさから抜け出せるなら結婚を考えてもいいが、相手がいない。
そう思った直後、また和葉の顔が頭に浮かんだ。
(再会してからというもの、頻繁にあの子について考えてしまう。好きなのか?)
仕事への熱意は羨ましく、航空整備士としての彼女を信頼し尊敬もしている。
社内の飲み会には行かないが、和葉とならもう一度、乾杯したいと思えた。
「目を守れ」と御子柴に声をかけられた。
地上より近い太陽から強烈な日差しがコックピットに差し込んでいる。
(眩しい)
彼女に対しても感じるこの気持ちは、はたして恋愛感情なのだろうか。
サングラスをかけた五十嵐は、安定飛行の中で意識の十パーセントほどを自分の心に向け、冷静に分析しようと試みた。

* * *

退勤の十七時に近づくと、早番の整備士たちは片づけに入る。
格納庫にいる和葉も残りの作業を遅番の整備士に引き継いでから、工具のひとつひとつを布で拭いて工具箱に戻していた。
工具を手入れする時間も好きなのに頬が膨らむのは、低音ボイスのからかいが頭の中をリピートするせいだ。
『可愛いから構いたくなる。そう思っておけば?』
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