100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
重圧や責任に押しつぶされないよう強い気持ちが必要で、もちろん体力もいる。好きでなければ続けられないだろう。
和葉が巨大な機体に胸を躍らせるのと同じように、パイロットも空を飛ぶことに憧れてこの業界に入った。そう思うと意地悪な五十嵐にも親近感を覚えた。
気分をよくした和葉は重たい工具箱を提げて浅見を誘う。
「帰りにランウェイに行きませんか?」
今日は航空機について語りながら、いつも以上に美味しくお酒を飲めそうな気がする。
「なんで滑走路に?」
「違いますよ。私の行きつけのバーです。忘れました?」
「ああ、前に一度連れていかれた横浜の店か。遠慮しておく。あそこは色んな人に話しかけられるから落ち着かない」
「それが楽しいのに」
そういえば五十嵐もランウェイが苦手そうな言い方をしていた。
彼がパイロットだと知った時は焦ったが、気づかずに飲んでいた時間は結構楽しかったと思い出していた。

作業着からTシャツと七分丈パンツに着替えた和葉は、横浜駅で下車した。
日没前の繁華街を通り、商業ビルの四階に上がってランウェイのドアを開ける。
カウンター内で忙しそうに立ち動くマスターが笑顔を向けてくれた。
「和葉ちゃん、いらっしゃい。まだ席があってよかったよ」
「一席だけ。今日は一段と盛況ですね」
テーブル席から常連客が手を振ってくれたけれど、空いているのはカウンターの端の席のみ。
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