100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
「まだお礼を言っていませんでした。この前は五十嵐さんの誕生日を教えてくださってありがとうございました」
「あれは独り言だけど、祝えたならよかった。フィアンセにスルーされたら、あいつが気の毒だからさ」
後輩パイロットを可愛く思っていそうな言い方に口元が緩む。
御子柴は五十嵐がパイロットに成り立ての頃の担当教官だったと聞いている。和葉にとっての浅見のような存在なのだろう。
「五十嵐さんとプライベートな話もされるんですか?」
飛んでいる時に狭いコックピットで交わされる会話が気になった。
(もしかして、私の話もしているのかも)
それを想像して照れくさく感じたが、御子柴が不満そうな顔をした。
「聞いてもあいつはプライベートに関してほとんど話さない。恋愛相談にのってやろうという俺の真心が伝わらないようだ。つまらない男だよ」
文句のあとに御子柴が話してくれたのは、訓練生だった頃の五十嵐が初めてジャンボジェット機を操縦した時のことだ。
普通はガチガチに緊張したり、逆に気分が高揚して口数が多くなったりするそうだが、彼は無表情で淡々と操縦し、指摘箇所のひとつもなく初フライトを終えたという。
「ヒヨコらしくはしゃいでくれたら、命を預かる仕事だと厳しく注意もできたのに。あいつは五年ほどジャンボジェットを飛ばしているようなスカした顔をしていたな」
それを聞いて和葉は自分の場合を思い出していた。
< 92 / 243 >

この作品をシェア

pagetop