イケメンカリスマ美容師の沼は思った以上に深そうです
「早く行ってあげたら?」
「いい? ごめんね」

 私と朝山さんに謝りつつも凉々花は完全に乙女の顔になり、そのまま同窓会会場をあとにした。
 たっぷりと愛されている凉々花だけれど、彼女もまた負けず劣らず彼を大事にしていて、互いに尊重し合っているからこそうまくいっているのだと思う。

「花咲さんは好きな人、いるの?」

 シャンパンをひと口飲んだところで朝山さんからそんな質問が飛んできて、むせ返しそうになってしまった。

「……いる、かな」
「えー、気になる! どんな人?」
「……美容師さん?」

 正確に言えば“イケメンカリスマ美容師”なのだが、わざわざ協調することでもないのでこの場では無難に伝えておいた。
 本当は彼がどんなにすごい人物かをとうとうと話して聞かせたいくらいなのだけれど。

「美容師の彼氏! だからなんだね。今日の髪型、すごく素敵だもん」
「ありがとう。でも彼氏じゃないの。完全な私の片思い」

 朝山さんはまずいことを口走ったとばかりに苦笑いをし、「そうなんだ」と小さく相槌を打った。

「でも美容師ってモテそう。付き合ったら常に浮気の心配しなくちゃいけないんじゃない?」

 たしかに男性美容師の世間的なイメージは、ノリが軽い、浮気する人が多そう、休みの日は女友達とばかり遊んでそう、といったネガティブなものが多い。

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