イケメンカリスマ美容師の沼は思った以上に深そうです
 快永さんも女性たちから異常なほどモテるのは間違いない。
 実際に彼の私生活がどういう感じなのかはまったく知らないけれど、経営者としての仕事もあるから忙しくしていて、チャラチャラと遊んでいる暇はないはずだ。
 彼だけは絶対に一般的な美容師のイメージに当てはまらない。
 ……というのは単なる私の願望だ。それは自分でもちゃんと気づいている。

『彼がアンタなんか本気で相手にするわけないんだから早くあきらめることね』

 サンドリヨンで見知らぬ女性客から浴びせられた痛烈な言葉が急に脳裏をよぎった。
 付き合ってもいないのに浮気の心配をするなんて私には百年早い。彼女の言うとおり、相手にしてもらえてもいないのだから。

「なんかごめん。余計なこと言って」
「あ、ううん。全然」
「でもさ、楽しそうでいいなぁ。私も恋がしたい」

 朝山さんがかわいらしく肩をすくめる。おそらく今の彼女には、恋人も好きな人もいないのだろう。

「実は高校生のころ、倉本くんのことが……好きだったんだよね。私の初恋」
「え?! そうなの?」

 その発言には驚いて、目を見開きながら両手を口に当てた。
 思わず倉本くんを目で追ってしまう。そうか、彼女にとっては今日、初恋の人との再会の日だったのだ。

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