イケメンカリスマ美容師の沼は思った以上に深そうです
「なになに? なんの話?」

 突然私たちに話しかけてきたのは、同じクラスだった塚田(つかだ)くんだ。
 彼は見た目は特にイケメンではないものの、昔からコミュニケーション能力に長けていて、誰にでも親し気に話しかけるタイプだった。
 今日もニコニコと人懐っこい笑みをたたえていて、懐かしい記憶がよみがえってくる。
 いつもムードメーカーで明るい塚田くんのことを、あのころ少しだけいいなと思っていたのは、誰にも話していない私の胸の中だけにある秘密だ。

「うわ、花咲じゃん。一瞬誰かわからなかった」
「久しぶりだね」
「なんか垢ぬけて綺麗になったな」

 その言い方だと昔はダサかったという意味にも聞こえるけれど、それは事実だからなにも言い返せない。
 高校生のころの私は野暮ったくて目立たなかったし、髪型や服装でオシャレをする楽しさを知らなかった。
 全部、この一年間で快永さんが教えてくれたようなものだ。

「あ、わかった。倉本だろ?」

 私と朝山さんが話していた視線の先に倉本くんがいたので、塚田くんは勘を鋭く働かせたらしい。

「倉本の人気は今も健在だな。今、彼女いないって言ってたから余計に群がられてる」
「え?! 彼女いないの?」
「さっきそう言ってたけど」

 塚田くんの発言にすかさず食いついたのは朝山さんだ。急に瞳がキラキラと輝きだした気がする。

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