イケメンカリスマ美容師の沼は思った以上に深そうです
「私は……やめとく」

 凉々花は帰ってしまったし、特に仲がよかった友達はほかにいないので、私がカラオケに参加すると浮いてしまう。
 ここで懐かしい顔ぶれを見て話ができただけで、私は充分満足だ。
 
「帰るのか?」
「うん。ごめんね」
「みんなに見せるために服も髪も気合入れてきたんじゃないのかよ。もったいないじゃん」

 塚田くんは誤解している。
 服装はそれなりのものを選んだだけだし、髪は快永さんに会いたいという理由だけで美容院へ足を運んだのだ。
 決してオシャレした自分を見せびらかすためじゃない。

「馬子にも衣裳だよね。家に帰って部屋着に着替えたらホッとするだろうな」

 自虐的にフフフと笑うと、塚田くんが「その格好、似合ってるけどな」と困ったような顔をしてフォローしてくれた。

「じゃあ、駅まで一緒に帰るか」
「え、塚田くんはカラオケに行くんじゃないの?」
「俺もなんか……あいつらのノリがめんどくさくなってきた」

 塚田くんがあの輪の中に入ったら、今以上にとても盛り上がると思う。
 だからそれとなくカラオケへの参加を勧めてみたけれど、彼は私が帰るなら自分もそうすると言って聞かなかった。
 そんなやり取りをしているうちに同窓会はお開きになり、全員ぞろぞろとホテルをあとにする。

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