妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
 それらのことを話し終えた父は優しく円香の手を握りしめた。そして、円香に本題を告げる。

「今のは全部父さんたちが勝手に決めたことだ。まだ円香の気持ちを聞いていない。今日はそれを聞きに来たんだ。今の円香に訊くのは酷なことかもしれないが、どうか教えてほしい。何を言っても構わないから正直な気持ちを言いなさい。円香はどうしたい?」

 きっと、朔也と結婚したいと、そう泣いて縋ったっていいと言ってくれているのだろう。たとえそれが現実的な話ではなかったとしても。

 だが、ずっと聞き分けのいい子として育ってきた円香にはそんな選択はできない。何よりもう円香自身が朔也を拒絶している。朔也を思い浮かべるだけで、苦く暗い感情ばかりが湧くのだ。もうどうやったって元には戻れない。

「……皆が決めた通りにしてくれたらいいよ。だって、それ以外ない……もう戻れない」
「円香……わかった。わかったよ、円香」

 父は円香の手を撫でさすり、何度も頷いている。母も円香の肩を抱き寄せ、優しく頭を撫でてくれる。彼らのその行動や表情から、二人が全面的に円香の味方になってくれるという気持ちが伝わってきた。

 麗香も実の子である以上、なんだかんだで父も母も円香のことばかりは考えていられないだろうと思っていたのだ。結局は姉として妥協する選択だけを求められるんじゃないかと思ってしまっていた。

 けれど、それは円香の思い込みだったようだ。今は何を言っても許されるような空気が確かにそこにはあった。
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