妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
「円香。この間のこと、ちゃんと考えてくれたか?」

 円香は食い気味に答える。

「考えました」

 実際は考えたというよりは、彰史のあの傷ついた表情を見た時点でもう答えが出ていた。円香の中にはもう一つの思いしかない。

「じゃあ、円香の気持ちを聞かせてくれるか?」

 円香は彰史を真っ直ぐに見つめて「はい」と頷き、彰史に正直に答える。

「彰史さんを拒絶しようだなんて思っていません。ただ怖かったんです。心を見せるのが。心をさらけ出したら、思い出したくない過去のことも表に出てきてしまいそうで怖かった。初めてのときがそうだったから……だから、思い出さないように、必死に何も考えないようにしていました。それであんな態度を……ごめんなさい」
「……そうか。理由はわかった。怖い思いをさせたのはすまなかった。もうやめておくか? 怖いんだろ?」

 円香は思いきり首を横に振って否定する。

「向き合います。過去を怖がるんじゃなくて、彰史さんとの今に向き合いたいです。彰史さんとのことから逃げたくない」
「円香……」
「ただ、いきなりは難しいかもしれません。すぐには変えられないかもしれない。それでもいいですか? ちゃんとできるようになるまで待っていてくれますか?」

 不安な表情で彰史を窺う円香に対し、彰史は表情を緩めて微笑む。

「ふっ、ちゃんと自分の気持ちを言えるじゃないか。最初からそうやって我慢しないで言えばよかったんだ」
「……はい」
「円香の気持ちはわかった。別に俺は鬼ではない。円香の準備が整うまで待つさ。俺と向き合うと言ってくれて嬉しいよ。俺も円香としっかりと向き合うと約束しよう」
< 77 / 201 >

この作品をシェア

pagetop