御曹司は離婚予定の契約妻をこの手に堕とす~一途な愛で溶かされました~
 抱きしめたまま、葵さんが私の頭をポンポンと軽く叩いた。

「つまり俺は、はじめから瑠衣を逃すつもりはなかったということだ」

「で、でも、私が自信を持てるまでって、あのとき言っていたわ」

 現状をうまくのみ込めない。それではあの約束はなんだったのかと、頭が混乱する。

「そうだな。だから、ここで俺たちの関係を見直そうと思う」

 不安がよぎる私とは対照的に、葵さんが真剣な顔で見つめ返してきた。

「俺は、瑠衣を愛してる」

 告げられた言葉に、息をのむ。

「交際相手がいるとわかって、一度は瑠衣をあきらめた。だが、別れたとなれば話はべつだ。スピード結婚に応じてもらうためにべた惚れな男を演じると言ったが、瑠衣に向けた言動はすべて本気だ」

 ストレートな言葉の数々が、私の中に少しずつ浸透していく。

「もたもたしているうちに、ほかの男に掻っ攫われるなど我慢ならない。まずはどんなかたちでもいいから、瑠衣を俺のものにしておきたかった」

 次第に状況を把握して、瞳が潤みはじめた。

「俺を好きになってもらえるように、ずいぶん瑠衣を甘やかしてきたつもりだが」

 艶めいた流し目を向ける葵さんに、ドキリと鼓動が跳ねた。
 考えてみれば、私はまだ彼に抱きしめられたままだ。葵さんとこれほど密着するなんて初めてで、慌てて身を捩ったがビクともしない。
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