御曹司は離婚予定の契約妻をこの手に堕とす~一途な愛で溶かされました~
* * *
葵さんと心身ともに結ばれて、数日が経ったある日。出社した社内は、いつになく落ち着きがなかった。
違和感を抱きながら、葵さんと別れて総務課のオフィスへ向かう。
「おはようございます」
自席に着き、近くにいた田中さんに私から声をかけた。
「あ、ああ。お、おはよう」
打ち解けたとまでは言わないが、田中さんとは和解できたと思っていた。
それなのに今朝は久しぶりにぎこちない反応を返されて、なにかしてしまったのかと不安になる。
「あのさ、成瀬さん」
「はい」
遠慮がちな彼に、内心で首をひねる。
「小早川さんのことだけど……」
はっきりしない物言いは、もしかしてよくない話だからか。
「夫に、なにかありましたか?」
葵さんとは、ついさっきエレベーターのところで別れたばかりだ。とくに変わった様子はなかったと思うが、私に言いづらいなにかを抱えていたのだろうか。
「いたいた、成瀬さん。ちょっと、黙っているなんて水臭いわよ」
私が出社していると気づいた長谷川さんに、声をかけられる。
「なんの話でしょう?」
いまいち状況が掴めず、困惑する。
「小早川さんが社長の息子だなんて、知らなかったわ」
「え?」
彼は身分を明かしていない。
どこから知られてしまったのかとオフィス全体を見回したところ、たくさんの視線を集めていると気づく。どうやら、ここにいる全員がそれを知っているようだ。
「小早川さんが専務に昇格するっていう辞令交付が、社内メールで来ているの。併せて、彼が社長の縁者なのも発表があったのよ」
思わず田中さんに視線を向けると、彼はコクコクと何度も首を縦に振った。
「専務にという話は知りませんでしたが、彼の出自はその通りです」
正式に公表されているのならここで隠す意味はなく素直に認めたところ、聞き耳を立てていただろう周囲にざわめきが広がる。
葵さんと心身ともに結ばれて、数日が経ったある日。出社した社内は、いつになく落ち着きがなかった。
違和感を抱きながら、葵さんと別れて総務課のオフィスへ向かう。
「おはようございます」
自席に着き、近くにいた田中さんに私から声をかけた。
「あ、ああ。お、おはよう」
打ち解けたとまでは言わないが、田中さんとは和解できたと思っていた。
それなのに今朝は久しぶりにぎこちない反応を返されて、なにかしてしまったのかと不安になる。
「あのさ、成瀬さん」
「はい」
遠慮がちな彼に、内心で首をひねる。
「小早川さんのことだけど……」
はっきりしない物言いは、もしかしてよくない話だからか。
「夫に、なにかありましたか?」
葵さんとは、ついさっきエレベーターのところで別れたばかりだ。とくに変わった様子はなかったと思うが、私に言いづらいなにかを抱えていたのだろうか。
「いたいた、成瀬さん。ちょっと、黙っているなんて水臭いわよ」
私が出社していると気づいた長谷川さんに、声をかけられる。
「なんの話でしょう?」
いまいち状況が掴めず、困惑する。
「小早川さんが社長の息子だなんて、知らなかったわ」
「え?」
彼は身分を明かしていない。
どこから知られてしまったのかとオフィス全体を見回したところ、たくさんの視線を集めていると気づく。どうやら、ここにいる全員がそれを知っているようだ。
「小早川さんが専務に昇格するっていう辞令交付が、社内メールで来ているの。併せて、彼が社長の縁者なのも発表があったのよ」
思わず田中さんに視線を向けると、彼はコクコクと何度も首を縦に振った。
「専務にという話は知りませんでしたが、彼の出自はその通りです」
正式に公表されているのならここで隠す意味はなく素直に認めたところ、聞き耳を立てていただろう周囲にざわめきが広がる。