御曹司は離婚予定の契約妻をこの手に堕とす~一途な愛で溶かされました~
「成瀬に足らないのは、自信だ。そして必要なのは、自分を認めてくれる他人だ」

 迷いなくきっぱりと言いきられると、そうなのかもしれないと思えてくる。

 渚といたときは、彼女が私のすべてを受け入れてくれるから心地よかった。
 その後に出会った弘樹だって、関係が上手くいっているときはそういう存在だったはず。

「ひとりで抱えてきたものを、こうして明かしてくれたくらいだ。少しは俺を信用してくれていると、自惚れてもいいか?」

 小早川さんに関しては、よい話しか聞こえてこない。だから、もともと信頼できる人だろうと捉えていた。

 実際に話してみればたしかにその通りで、たまたま顔を合せただけの私の悩みに耳を傾けてくれて共感してくれる優しい人でもある。
 さらに言えば、少し強引で意地悪。
 だけど私は、それを嫌だとは感じなかった。

「そうかもしれませんが。アルコールも飲んでいますから、気が緩んだのでしょう」

 素直に認めればいいのに、酔っているせいにしてしまう。本当にかわいげがないと、自分が嫌になった。

「成瀬は俺の悩みを聞くために、食事に付き合ってくれただろ? その解決に手を貸してくれるのなら、俺も成瀬が自信をつけられるように協力を惜しまない」

 そっけない私の態度に嫌な顔もせず、小早川さんは笑顔でかわしてしまう。
 すっかり自分の話ばかりしていたが、彼についてきた理由はそれだったと思い出した。

 今夜は本当に、なにもかもが私らしくない。自覚はないけれど、それほど心が弱り切っているのだろう。
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