御曹司は離婚予定の契約妻をこの手に堕とす~一途な愛で溶かされました~
「小早川さんの悩みとは?」

 よほど困っているのか、彼の眉間にしわが寄る。

「うちの両親は、少々古風なところがあるんだ」

 ドリンクをひと口含んだ彼は、言葉を慎重に選びながら話しはじめた。

「両親は俺に、跡継ぎとしてさっさと結婚しろと年々うるさくなる。ここ数年は、頼んでもいないのに見合いの話まで持ってくるようになった」

 小早川さんは長男で、五歳下の弟がいるという。
 長男だから家を継げとかお墓を守れとか言うのなら、たしかに古い考え方なのかもしれない。

「結婚相手ぐらい、自分で決めたい。そう言って毎回突っぱねているが、両親は聞く耳を持たない。それに、正直に言えば今は仕事が忙しくてそんな余裕がない」

 彼はたしか、営業部長になって三年目だったはず。
 サウンド・テクニカはクリーンな会社を目指しているが、相手のある業務はどうしても時間外に動くことが増える。先日のように休日出勤もあり、多忙な様子がうかがえた。

「理不尽な要求だろ?」

「まあ、たしかに」

 そこに帰結するのかと、内心で苦笑する。

「しばらく時間稼ぎをしたい。そこで成瀬には、俺に余裕ができるまでの間、仮初の妻になってほしい」

「は?」

 思いもよらない話に、さすがの私も驚きが前面に出てしまった。
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