御曹司は離婚予定の契約妻をこの手に堕とす~一途な愛で溶かされました~
「成瀬も、そんな顔をするんだな。どこが氷のビスクドールなんだか」

「その呼び方は、本当にやめてください。それに、小早川さんだってサウンド・テクニカの貴公子なんて呼ばれているじゃないですか」

 仕返しにとばかりに言えば、心底嫌そうな顔をされる。

「……お互いに、精神的なダメージを与えるのはよそう」

 堅苦しい口調でそう言った彼に、しっかりとうなずき返した。
 けれど次の瞬間、なんだかばかばかしくなって同時に噴き出す。

「ほら。成瀬も、こういう素直な反応ができるんだよ」

「それは、小早川さんのせいですから」

「俺が原因だなんて、光栄だ。なあ、成瀬」

 ふと笑みを消した彼につられて、居住まいを正す。

「俺と、結婚してくれないか?」

 ストレートなプロポーズに、目を見開いた。

「俺を助けてほしい」

 突拍子もない話だとわかっているのに、真剣に考えてしまう。

 これまで私は、ずっと自分を好きになれないでいた。
 嫌われるのが怖くて、人の顔色をうかがってばかりいる。そのくせ感情表現が素直にできなくて、結局は疎まれてしまう。

 人間関係が上手くいかない理由を両親のせいだと恨みもしたし、相手にどうしてわかってくれないのかとなじりたくもなった。
 それが八つ当たりのようなものだと、自覚もある。

 自分が変わらなければなにも解決しないのに、どうしていいのかわからなくて結局なにもしない。
 私には無理だからとあきらめ続ける自分を、好きになれるはずもなかった。
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