御曹司は離婚予定の契約妻をこの手に堕とす~一途な愛で溶かされました~
 そうと決まれば詳しく話を詰めておく必要があると、小早川さんはどんどん話を進めていった。

「――私は父も母も連絡を取っていないので、知らせる必要はありません」

 離婚が決まっている契約の結婚など、わざわざ両親に言わなくてもいい。
 そもそも本気の結婚だったとしても、メールで知らせるくらいで終わらせてしまっただろう。

「そうか。俺の方は、とりあえず父に紹介させてほしい」

 彼の悩みからして、それは当然だとうなずいた。

「明日の終業後に、時間はあるか?」

「かまいませんが、ずいぶん急ですね」

「ああ。このチャンスを逃したくないからな」

 つまり、それほど悩まされていたのだろう。

「俺たちの関係だが」

 社内には、私が少し前までほかの男性と交際していたのを知っている人もいる。三浦さんがこれみよがしに話しているようで、話は面白おかしく広がっている可能性もある。

「俺は以前から成瀬に想いを寄せていたが、相手がいるからとあきらめていた。ところがふたりが別れたのを知って、弱っている成瀬につけ込んだ」

「それでは、小早川さんの印象がよくありません」

「それはお互い様だ。成瀬はすぐに、俺に靡いたことになるからな」

 私の評判はもともとそれほどよくないだろうから、今さらだ。

「だが俺から近づいたと強調すれば、印象はそれほど悪くならないだろう。こう見えても、社内での俺の評判はいいらしいからな。成瀬が俺に捕まったと認識されれば好都合だ」

 そのわざとらしい自信満々な物言いに小さく噴き出しながら、本当にそれでいいのかと視線で問いかけた。
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