御曹司は離婚予定の契約妻をこの手に堕とす~一途な愛で溶かされました~
「君は、ずいぶんご両親に苦しめられてきたようだね。葵の話では、学生時代から親に頼らずここまで自力でやってきたと。それは誇るべきで、非難されることではない」

 思いやりを感じる言葉と口調に、好意的に捉えられているようだと小さく安堵した。

「ふたりが想い合っているのなら、私も妻も反対はしない。それよりも、葵に結婚する意志があって安心しているくらいだ。これからは家族として、仲良くしてくれるとうれしい」

 すんなり認めてくれるのは、それほど彼が結婚に興味を示していなかったということか。
 かなり心配されていたのだろうと、社長のことのほか明るい調子からも伝わってくる。

「ありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願いします」

 騙している心苦しさは、無表情の裏に隠した。
 そんな私の気持ちをよそに、話はとんとん拍子に進む。

「それじゃあ、週末に婚姻届を提出する予定でいるから」

 葵さんはいつの間に用意していたのか、自身は記入済みの婚姻届に社長のサインをもらった。

「わかった。ああ、式については……」

 離婚が前提なのだから、式なんて挙げるわけにはいかない。昨夜の段階でそこまで考えが至っていなかったなど、あまりにも浅はかだった。

「今はとにかく、瑠衣の気が変わってしまう前に捕まえておきたかっただけだ。式は彼女の意見を聞きながら、おいおい考えていくつもりでいる」

「そうか」

 葵さんの機転の利いた返しは、お父様を納得させるには十分だったらしい。
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