御曹司は離婚予定の契約妻をこの手に堕とす~一途な愛で溶かされました~
「私の方の保証人は、友人に頼んでみます」

 渚たち夫婦も、そろそろ日常に戻っているはず。彼女に声をかければ、応じてくれるだろう。
 ただし、なぜ急に結婚を決めたのかを追及されそうだ。加えて、その相手が弘樹でないのはなぜかとも。

「そうしてくれると助かる。それから、夫婦になるからには一刻も早く一緒に暮らしてもらう。当面は、必要なものだけまとめてうちへ来てくれればいい」

 急展開だが、結婚に承諾した時点で一緒に暮らすだろうとは想像できていた。

「わかりました」

 とはいえ、離婚を前提にしている上に婚姻期間も不透明だ。いつ元の生活に戻るのかが読めず、今借りている部屋を安易に手放すのはさすがに躊躇する。

「引っ越しは少し後になるかもしれないが、部屋はその後で解約すればいい」

「解約、ですか?」

 そうだとうなずいた彼を、じっと見つめた。

「瑠衣はなにも心配しなくていい。俺たちの関係が変わっても、すぐに追い出すような真似はしないと約束する。それに、瑠衣の希望に合う部屋を探すのも協力を惜しまない」

「ですが」

「それを申し訳ないと思うのなら、ずっとうちにいてくれてかまわないぞ」

 そう言えば反論できないと、わかっての発言なのだろう。
 この遠回しの気遣いに異を唱えるのは憚られ、彼の言い分にうなずいた。

「瑠衣、俺に遠慮はいっさいいらないから。そうそう、その堅苦しい敬語もなしだ」

 私にとって葵さんは目上の人であり、いきなり砕けた口調はハードルが高い。

「徐々にでいいから、俺に慣れていってほしい」

「わかりました」

 言われた傍から敬語で返した私を、彼はくすりと笑った。
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