御曹司は離婚予定の契約妻をこの手に堕とす~一途な愛で溶かされました~
* * *

 週末になり、渚と会う約束したカフェへひとりで向かった。
 彼女には、葵さんとは契約の関係だと明かすつもりはない。そんなことをすれば、烈火のごとく怒られるのが目に見えている。

 店に着くと、渚はすでに席に座ってすっかりくつろいでいた。

「ごめん、待たせたかな」

「ううん、大丈夫。さっきまで、旦那の誕生日プレゼントを見ていたから」

 幸せそうに微笑む彼女は、以前に増して綺麗になったと思う。

「新婚生活はどう?」

「まあまあってとこね。同棲生活の延長って感じかな」

 そっけないように言っているが、その表情には幸せがあふれている。

「それで、お願いがあるって言っていたけど?」

 興味津々で前のめりになる渚に、若干の気まずさを感じる。

「実は、結婚することになったの」

「へ?」

 この答えは予想していなかったのか、いつもはキリリとしている彼女が呆けた顔になった。

「結婚……って、えぇ⁉」

「落ち着いて」

 思わず大きな声になる渚を、静かにしてくれるように窘める。

「そんなの無理よ。なになに、私たちの結婚に触発されちゃったの?」

「そういうわけじゃ、ないけど」

 相手は弘樹だと、彼女はまったく疑っていないのだろう。この後の渚の反応を考えると、別人の名前を告げるのを躊躇しそうになる。
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