イケメン妻はお飾りの年下夫の愛に囚われる
「それでは、お休みなさい」

 いつものようにラファエルはアニエスを抱き、一度精を放つと、さっとガウンを羽織り自室へと戻ろうとした。

「あ、あの…ラファエル」

 そんな彼の背中を、いつもは黙って見送っていたアニエスは、その日初めて呼び止めた。

「どうかしましたか?」

 二人の寝室を繋ぐ扉を半分開けた状態で、ラファエルは足を止めて振り返った。

「えっと…その…ここでの生活は…どうですか?」

 我ながら下手な聞き方だと思ったが、言ってしまったものは仕方がない。

「……特に不満はありません」
「そ、そう…」

 答えの前に少し間があったのが気になったが、顔半分が扉の影になっていて、暗がりだということもあり、彼がどんな表情でその言葉を口にしたのかアニエスにはわからなかった。
< 1 / 39 >

この作品をシェア

pagetop