イケメン妻はお飾りの年下夫の愛に囚われる
「どうして…どうしてこんな」

 何度も達し、それも収まらないうちに攻め立てられ、意識を朦朧とさせながらアニエスは呟いた。

「あなたが、僕を捨てようとするからです」

「すて…るつもりなんて」

「じゃあ、どうして離縁などとおっしゃるのですか。やはり他に男が…」

「馬鹿にしないで! 人を何だと思っているの、それを言うならあなたの方こそどうなの」

 不貞を疑われ、アニエスは心外だとばかりに怒鳴った。

 まだ少し痺れが残っていたが、拘束されていなければ、彼の頬をひっぱたいていただろう。
 
「僕がどうだと?」

 アニエスの抗議に、彼は意味がわからないというように小首を傾げる。

 それが彼女の怒りを更に煽った。

「世間ではひと晩に何回もするそうじゃない。でもあなたが私を抱くのは一度だけ。それは義務感からでイヤイヤだから。私の体に薔薇の痕を付けないのは、自分の痕跡を残したくないからなんでしょ」

 女性騎士たちから話を聞いてから、ずっとモヤモヤしていたものを、アニエスは怒りに任せて吐き出す。

「朝まで一緒にいないのも、私といるのがいやだからなんでしょ。だから」

「ま、待って、待ってください」 

「ん、んんん、んん」

 尚も怒鳴り続けるアニエスの口を、ラファエルが手で覆って遮った。

「にゃ、にゃに、んん」

「少し黙って…」

 頭を振ることは出来るので、逃れようとするが、ラファエルが伸し掛かってきた。

 寝台とラファエルの体に挟まれ、ずしりと彼の重みを感じた。

「『薔薇の痕』とは、意味をわかって言っていますか?」

 そう尋ねるラファエルの顔が、心なしか赤くなっている。

 顔を動かすことも出来ないので、瞼をパチパチさせて答えた。

「あなたの体にそれがないのは、僕が痕跡を残したくないからだと、そう思っていると?」

 その問いにも、アニエスは瞬きで答えた。

「それで、あなたはそれが不満だと?」

 しかし次の質問には、目を大きく見開いた。
 
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