イケメン妻はお飾りの年下夫の愛に囚われる
「それでいいの? 私が話せば上も親身になってくれるわ」

「はい。ですが、大丈夫です。お心遣い感謝します」

「上官だし、部隊長としてこの部下が困っているなら力になりたいと思っているだけよ。あなたもこの仲間なんだから」

「ご立派です。正義感が強いのですね」

 部隊長であるアニエスが証言すれば、上層部もきちんと対応してくれるだろう。

 しかし、異母兄の仲間からの暴力なら、もし告げ口しようものなら、彼の家での立場をさらに悪化させることも有り得ると察した。

「お節介で、貴族令嬢らしくないとよく言われるけどね」

「貴族令嬢など、表向きは着飾っていても、その中身は醜悪な者が多い。そのような令嬢になる必要などありませんよ。ベルフ先輩は彼女たちよりずっとずっと素敵な人です」

「…そ、そう。ありがとう」

 他の令嬢たちへの辛辣な言葉に驚くとともに、褒められてアニエスは照れた。

「でも、ありがとうございます。このご恩は忘れません」

「そんな大袈裟な」

「いいえ。殆どの者が見て見ぬ振りをしている中で、部隊長だけが助けてくれました」

 その出逢いがきっかけで、彼はアニエスを見たら笑顔で駆け寄ってくるようになった。

 その出自のせいか、人に心を開かなかった彼が、アニエスに懐いたのを見た周りは驚いていた。

 アニエスとしては、ほかの部下達と同じように接していたつもりだった。

 しかし、彼は男でアニエスは女。しかもラファエルはその美貌で多くの女性たちを惑わせてきた。

 だから、彼女もとうとう彼に落ちたのかと変に勘ぐられた。

 アニエスがラファエルに落ちたというのはあっても、ラファエルがアニエスに落ちたと考える人がいないことに、アニエスは密かに苦笑した。

 しかし、二年前ラファエルはその後すぐ国境勤務に配属され、以降彼と会うことはなかった。 
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