イケメン妻はお飾りの年下夫の愛に囚われる
「ありがとうございます」

 たとえ傷ついていたとしても、その美貌の破壊力は決して損なわれていない。

 なるほど、女性たちが騒ぐだけのことはある。騎士団には貴族の子弟が多く、大抵整った顔立ちをしているが、その中でも、彼の美貌は際立っている。

 しかし、彼女の好みは歳下ではなく、落ち着いた歳上の男性だ。

「いえ、大丈夫です」

 立ち上がるのを助けようと差し出したアニエスの手を、彼は断って自分で立ち上がり、パンパンと制服についた土埃を払った。

「ハンカチは持ってる?」

 唇から血が出ているのを見て、アニエスはポケットからハンカチを取り出した。
 
「ありがとうございます。ベルフ先輩」

 しかし彼はそれを受け取らず、締めていたタイで血を拭った。

「望むなら証言するけど」

 ハンカチを元に戻し、余計なお世話だと思いながら、もし暴力を振るわれたことを抗議するなら口添えすると、申し出た。

「いえ結構です。そんなことをすれば、かえってややこしくなります」

「そう」

「それに、彼らは僕の兄の友人達です」

「お兄さん?」

「はい。ただし半分だけ」

「ああ」

 ラファエルが庶子であることは耳にしていたので、驚きはしなかった。
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