強引社長は才色兼備のOLにご執心 ~そのキス、どういうつもりですか?~
「おはよう。 外で待っててくれたのか」
「おはようございます。 長く路上駐車させるわけにはいきませんので」
「真面目か! じゃあ早く行こう。乗って」

さも当然というように社長が開けたのは助手席のドア。
断るのは自意識過剰だよね。私は素直に従った。

車内には今流行っている音楽のプレイリストが流れているだけで、それが落ち着かなくて口を開く。

「今日は何を観るんですか?」
「んー、主人公が世界滅亡を阻止するために奮闘する愛と感動の物語…『ワールド・ジャック』ってタイトルなんだけど。芹澤そういうの興味ある?」

その映画は私も知っている。洋画で、主人公を演じるのが有名な俳優だから話題になっているものだ。私が興味あるかどうかは置いておいてとりあえず決めているあたり、いつもの社長だ。まぁ、下手に純愛のラブストーリーを、なんてことになったら気まずすぎるので、いい選択だと思う。

「ないことはないです」

あくまで、あなたと趣味が合うなんて発見されては困るので曖昧に答える。それより、会話が終わってしまう。真剣に運転してないで、なんか話してよ社長!

そんな思いも虚しくこの沈黙に耐えかねているのは私だけで、社長は全然気にしていない様子でたまに口ずさんでいた。単純に映画が楽しみなのかもしれない。初めて見るお互いの私服とか雰囲気とか、そういうのをものともしない通常運転の社長がなんか悔しい。恋愛経験は多い方ではない私の方がドギマギしてしまうのは必然的なんだろうけれど。

映画館のあるショッピングモールに着くと、上映時間はリサーチ済みだったらしくチケットを購入すればちょうど入場開始のアナウンスが流れた。そういうところはちゃんとしてるんですね。なんてひっそり感心する。
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