スイーツ王子の溺愛はケーキよりもなお甘い

 ◇

(惨めだ……)

 兵頭に腕を引っ張られ、商店街の外れまでやってきた結乃は虚な表情で地面を見つめていた。
 結乃の記憶が正しければこの先には安っぽいラブホテルがいくつか並んでいたはず。
 兵頭の目的は火を見るよりも明らかでゾッとする。
 しかし、ここで逃げ出せば、柊登のお店に対する悪評が流されてしまう。

(こんなことになるくらいなら、好きだって伝えておけばよかった……)

 じわっと涙が浮かんでくる。
 結乃の腕を力任せに引っ張るこんな男に、いいように身体を弄ばれたくない。
 でも、ノエルのために奔走してくれた柊登に、迷惑をかけたくない。
 終わらない葛藤が始まり、迷いは足取りを鈍らせた。

「おいっ!早く歩け!モタモタするな!」
「きゃっ!」

 引っ張られた弾みで足がつんのめり、派手に転んでしまう。
 擦りむいた膝から血が滲んでいた。

「このグズ!」

 追い打ちをかけるように兵頭から手を踏みつけられ、結乃は痛みでうめいた。

(助けて……)

 昔ならこういうときはいつも貢が助けに来てくれるが、今日は救いの手は差し伸べられない。
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