スイーツ王子の溺愛はケーキよりもなお甘い
「そ、その女から誘ってきたんだ!これだから女は!色仕掛けでなんでも解決しようとしやがる」
「なっ!」
兵頭の言い分は嘘だと分かっていても腹立たしかった。
柊登のことを盾にとられていなければ、誰が望んでこんなところまで連れてこられるものか。
「黙れ!」
辛うじて冷静さを保っていた柊登の怒りは頂点に達する。
兵頭の青紫色の唇がしてやったりと歪んだ弧を描いた。
「いいのか?俺にそんな口をきいて!今すぐあそこから出て行って……」
「さっき調査会社から電話があった。調べはついている。お前は地主の息子でもなんでもない。商店街の裏に住むただの無職。つまり、偽物だ」
柊登の話を聞いた結乃は息を呑んだ。
「偽物?」
「ありもしない立ち退きの話で脅せば、結乃ちゃんが言うことを聞くと思ったんだろう。いったい何をする気だった!」
偽物だと言われた男は目に見えて、うろたえだした。
「ちっ違う!俺は悪くない!俺に気があるのはそっちだろう!?いつも嬉しそうに俺に笑いかけてきたもんな?そうだろ!?」
あの引きつった愛想笑いを、満面の笑みだと捉える方がどうかしている。
男は苦し紛れに結乃に手を伸ばした。
「私、あなたのことなんてひとつも好きじゃありません」
結乃がそう言うとどこからともなく派手な柄シャツを着た男性がふたり現れ、偽物の男の両脇を抱え上げた。
「ほーれ。さっさと貢さんのところに連れて行くぞ」
「俺達も貢さんに頼まれたからには、逃すわけにはいかねーんだよ」
「なんだよっ!離せ!」
偽物は突然身体を拘束され憤った。