このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
「ふぅ、美味しいです」
「ささ、お菓子もどうぞ。イリヤ嬢の好きなお菓子をお聞きして、取りそろえておきました」
 まるで商人のように、神官長は手をすりすりとこすり合わせている。これから口にすることの重大さを暗示させるような動きにも見えた。
 紅茶を半分ほど飲んだイリヤは、カップをテーブルの上に戻す。そして、姿勢を正してしっかりと神官長を見る。
「それで、今後のお話ですよね?」
「そうです、そうです。さすがイリヤ嬢。閣下が見込んだだけのことはあります。まさか、お二人が結婚されていたとは。そうですか、そうですか……」
 相変わらず神官長の笑い方は、うさんくさい。
「クライブ様……。私たちのことを、皆様にお伝えしていなかったのですか?」
 婚姻関係にあることを、ここにいる者たちにはとっくに言っていると思ったのだ。
「ああ。必要に応じて言えばいいと思っていたからな」
 つまり、今まではその情報は不要だったということだ。クライブにとって、結婚していようがいまいが、大した問題ではないらしい。
 ド派手な結婚式を挙げたわけではないから、知らない者は知らないだろう。
 イリヤだって家族には報告したが、サブル侯爵には伝えていない。むしろ、伝える必要もないとすら思っている。
 マーベル子爵は噂好きなところがあるから、あそこから広まるかと思ったが、そうでもなかった。その辺はきちっと母親が手綱を握っているに違いない。
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